スノー アンド アプリコット

「どうやって住んでる部屋まで突き止めたの?」
「いや、だから…」

ある日、切らずにいた女の一人から、都内に杏奈が戻ってきた、と聞いて。

「新宿のキャバクラで働いてるらしいって聞いたけど店まではわからなかったから、俺もホストになって。」
「ホストォォ?!」

二人が声を揃えて叫んだ。

「なんだよ。ナンバー1だったぞ。今は足洗ってるし。」
「当たり前よ! 医大生はそんな暇ないでしょ、普通!」
「で、情報集めて…そしたら案外簡単に見つかって。その店の黒服に金握らせて、住所吐かせた。」
「ホラァァやっぱりストーカーじゃないのおおおおお! ていうか手口がほんのりヤクザじゃないのおおおおお!!」
「…隣の部屋が空いてたのは偶然だぞ。」
「執念がすごいわよ。狂気すら感じるわね…」

怖い怖い怖い、と誠子ママとキララが手を取り合って抱き合い、雪山で遭難したみたいにブルブル震えている。

「ユキくんって、セレブでエリートのはずなのに、何故かタダ者じゃない雰囲気を感じるわけが、今よおおぉぉーーーーくわかったわ。」
「アンナもよっぽどおかしい奴だと思ってたけど、こっちも負けず劣らずだったわね。」
「お前らは大袈裟なんだよ、ったく...」

…確かに杏奈と出会わなければしなかったはずの経験は山ほどある。
情報を引き出すための心理戦、数えきれないほどのセックス、夜の世界、荒稼ぎ、それこそヤクザ絡みの危ない事。夜逃げなんか普通によくあることだということも知った。
それから、両親との軋轢。

俺が一人暮らしをすると言ったら、そんな必要がどこにあると両親は猛反対した。大学だって家から通えるのに。
学費以外の全ての費用は一切援助しない、と言われ、勘当同然で家を出た。
もうその時にはホストで稼いだ金がすごいことになっていたから、困りはしなかった。なんなら国立大の学費なんか、自分で出せるくらいだ。
今もその貯金を切り崩しながら暮らしている。

夜家にいないことが増えて、母親は不審がっていたけれど、ホストをしていることがバレなかったのは本当にラッキーだったと思う。
まあ、お嬢様育ちの母親は、そんなことは想像もできなかっただろう。
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