スノー アンド アプリコット
「あたしはユキとどうこうなる気はないの!」
「どうこうなってんじゃないの、とっくに。ズッコンバッコンなんでしょ。」
キララが呆れたように、下品な突っ込みを入れてくる。
「…そーだけど…そーじゃなくてーっ…」
あたしがぐぬぬと詰まると、一井がフォローするように口を開いた。
「まあ、わかるよ。要するに、依存するのが怖いんだろ、杏奈ちゃんは。」
「ーー……」
あたしは知っている。男に依存する女の、なれの果てを。
「あんな女には、絶対なりたくないのよ、あたしは…」
「あんな女って、…もしかして、お母さんのこと?」
誠子ママが躊躇いがちに言った。
その通り。
あたしの母親は、父親に依存していたばっかりに、父親が落ちぶれると同時に共倒れになって、破滅の道をまっしぐらに行った、愚かな女だった。
経済的にも、精神的にも。
「…ごめんね、ユキくんにちょっと、昔のご実家のこと、聞いちゃったんだけど。」
「…ああ。いいわよ、別に。」
わざわざ話すことでもないけど、隠すことでもない。
秘密にするというのは価値のある事に対してする行為であって、こんなことは秘密にする値打ちすらない。
「ユキくん、あんたがここで酔い潰れてる時、言ってたわ。こいつは誰のことも好きじゃないのに、どうして結婚はしたがるんだ、って。」
一井が、もっともな疑問だなあ、と笑った。
「…考えてみれば、そうよね。昔はともかく、今は公務員なんだから、一人でもなんとかやっていけるでしょう。その為に東京に戻ってきて必死でやってきたんでしょ。」
「そうよ。」
男なんかに依存しなくても、一人で生きていけるように。あんな女にならないように。
自分で稼いで自分で大学に行って、公務員試験をパスして、ここまで一人でやってきた。
「だけど、次々に色んな人と付き合って、結婚までしようと思ったのって、…どうして?」