スノー アンド アプリコット
おかわりのカクテルを一気に飲み干した。
「あぁっ、アンタまたそんな無茶な飲み方して!」
キララが顔をしかめた。
うん。
清々した気分だった。
「でもやっぱり、ユキはないわ。」
「ええっ?」
三人がピッタリと揃って、素っ頓狂な声を上げた。
「どうしてよーー」
誠子ママが言いかけたところで、重たいはずのドアが勢い良く開いた。
「やっぱりここか、お前は!」
息を切らせているわりに大声でそんな台詞を吐き、ユキが勢い余ったように体勢を崩しながら入ってきた。
何故か、少しほっとした顔をしていた。
「ったく、またこんな時間までお前は…ずっとここにいたんだな?」
「そうよ。」
「誰にも会ってないな?」
「はぁ? 彼氏でもないのにあたしの行動を制限しないでくれる?」
「お前は本当に往生際の悪い女だな!」
「杏奈ちゃんなら、仕事の後は僕とずっと一緒に居たけど?」
口を挟まれて、初めてユキは一井に気づいた。本当に、あたししか見えてないのかしら、こいつ。
「てめえは…」
一井の顔を見た途端、ユキが一気に不穏な空気を醸し出した。
ドーベルマンか、あんたは。
「待って待って待って、僕は君の敵じゃない。今だって素晴らしいファインプレーを見せたところだ、そこの二人に聞いてよ。」
一井がピストルを突きつけられた人みたいに両手を上げて捲し立てた。
「どういうことだーー」
そこで、カウンターに置いてあったあたしのスマホが鳴った。
ユキがギクッとした顔でこっちを見た。
知らない番号だ。
「待て、出るな。」
「だから、なんであんたにそんなこと言われなくちゃなんないのよ。」
「いいから、待て、早まるなーー」
本当に、なんなのよ。
別に出なくても良かったけど、ムカついたから当てつけのように出てやった。
「もしもし?」
まあまあいいからとりあえず一杯、なんてあたしの味方をしたのかユキに浮足立っているのか、誠子ママとキララがユキを捕まえて、ビールのグラスを押しつけている。
電話の向こうで、か細い声がかろうじて鼓膜を震わせた。