スノー アンド アプリコット
「…もしもし、杏奈ちゃん? 私…わかる? キヨカ。高校で、同じクラスだった…」
「キヨカ…?」
あたしが眉をひそめて反芻していると、ユキが本格的に青ざめて飛びついてこようとした。
あたしは身を捩ってそれを避ける。
「バカお前、マジでほんとに…」
「ステイ! キララ、そいつを押さえる!」
え〜、と言いながらも、キララはユキに触れる口実ができて、嬉しそうにユキに抱きついた。別にそこまでしなくてもいいけど。まあいいや。ガタイでいったら、キララのほうが立派なもんだから、ユキは敵わない。
「…あ…雪臣くん、そこにいるの? ごめんね、突然…雪臣くんの携帯から、勝手にあたしが杏奈ちゃんの番号を見ちゃったんだけど…」
「ユキの携帯から?」
あたしはユキの顔を見る。ユキはガッチリとホールドされながら、珍しく追い詰められた顔をしてあたしを見ていた。
ああ、思い出した。清華(きよか)。嶺山学園では珍しくない、お嬢様然とした、女子生徒だった。
素直で、嫌味のない子で、女子たちに遠巻きにされていたあたしとも割合仲良くしていた。
そんな女が、何の用?
「今、リールってカフェにいるんだけど…」
「リール? …って、うちのすぐそばの?」
「バカ、お前、」
「うるっさい! キララ、そいつの口を塞ぐ!」
え〜、キスぅ? キララが目を輝かせてユキの顔をむんずと掴んだ。
やめろー、とユキが顔を背けている。まあ、いいや。
「会って話したくて…ちょっと、出てこられないかな?」
「は? 別にいいけど。あたし今酔ってるけど。」
あたしはわけがわからないながらも、このまま断るのも気持ち悪いので、すぐ行くと返事をして、通話を切った。
ていうか、あたし、あの子の顔なんて今更、わかるかしら?
「行くな、行かなくていい、行く必要ない。」
必死の形相でユキが言った。
「あーほんとにうるさい。そんなことあんたに言われる筋合いない。キララ、そいつを離さないように。一井、じゃあまたね。」
キララは了解、と語尾にハートマークを付けていい、一井はにっこり笑って手を振った。
じたばた暴れるユキを、いい気味だ、と思いながら、あたしはレファムを後にした。