スノー アンド アプリコット

「アンナ! あんたジョーとどういう関係なの?!」

裏に行ったら行ったで、今度は女の子たちに矢継ぎ早に質問攻めにされた。

「…なんなの、あいつそんな有名なの?」

あたしは着替えながらげんなりして言う。

「そりゃそうよ! 入って1ヶ月とかであの"シエル"のナンバー1になって、ずーっと維持してたのよ。」
「一時期はこのへんでもよく見かけたよねー」
「2年経たずに、辞めちゃったのよね。伝説よね。」
「やっぱカッコイイなーー」
「………」

何、それ。
あたしを見つけて辞めたってこと?
そんなようなことを誠子ママが言っていた。
じゃあ、200万もポンと用意できたのは、歌舞伎町で稼ぎまくってたからってこと?

なんだ、そりゃ。
あたしは力が抜けてへたり込みそうになってしまった。

あたしが必死でここで学費を貯めている間、あいつは金に困ってもいないのにこんな世界に飛び込んで、伝説を作ってたってわけ。
それで、両親ともうまくいかなくなったってわけ。

「……ふ…」

自分でもなんだかよくわからない笑いが漏れた。

あーあ、何やってんの、あいつ。
真性の馬鹿だ。スケールがおかしい。

「ていうか、前よりかっこよくなってなーい?」
「それ思ったー! 前からさ、ホストなのに髪も染めないで逆に目立ってて硬派な感じはしたよねー」
「接客はSっぽいらしいよ。」
「イヤー、たまんなーい!」

黄色い悲鳴が交錯する中、一井に指名を外された三人がブーブー言いながら入ってきた。

「ちょっと、アンナ、なんなの? 一井さんと仲良いわけ?」
「コタツってどういうこと?」

一井みたいな、顔も良くて羽振りも良い上客なんて珍しいから、そりゃあいつまでもついていたかっただろう。

「しかもなんか一井さんとジョーが仲良さそうなんだけど。」
「どういう繋がり?」
「二人並ぶと絵になりすぎてヤバイ!」
「アンナ以外誰もつかなくていいって言われたんだけど!」
「アンナ、説明しなさいよ!」
「あーもー二人ともホントかっこいい、鼻血出そう!」
「白王子、黒王子って感じ?」
「わかるうー」
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