スノー アンド アプリコット
ーーユキも一井もVIP扱いで、丁重に放って置かれたものだから、あたしたちはレファムで飲むのと大して変わらない時間を過ごした。
あたしは臨時要員だから、時間が来たらキッチリ上がって、待っていた二人と一緒にまた歌舞伎町を歩いた。
あたしたち三人はとにかく目立っているようで、なんだか練り歩いているみたいな状態になっていた。
そのうち一井が飽きて、金を出すと言ったから、歌舞伎町を抜けたら、あたしたちはタクシーで帰ることにした。
「あー楽しかった! 2軒目行こうよ。レファム行く?」
「行かねえ。」
一井のウキウキとした誘いをユキがにべもなく切り捨てた。
「え? 行かないの?」
あたしが言うと、ユキは舌打ちをした。
「てめえは、俺と帰る!」
「わあ、あんまり盛ってると、嫌われちゃうよ。」
「うるせえ! もうここでいいわ。降りるぞ杏奈、じゃあな。」
「またね〜」
「ちょっと、なんなのよ…」
ユキにタクシーから押し出され、一井がいつも通りの笑顔で手を振って、タクシーが去っていった。
はあっ、とユキがため息をついた。
「お前なあ…」
「何よ?」
あたしは少し長い道のりを歩き出す。
静かだ。
まったく、騒がしい夜だった。
ユキが待てって、と言いながら追いかけてきて、あたしの手をつかまえた。
「お前やっぱ、ダメだ。今後ヘルプはもう行くな。」
「はあ? 命令しないでよ。」
「もう彼氏だからいいだろ。」
「なんで彼氏だと命令すんのよ。」
「お前いっつも彼氏でもないくせにって言うのが常套句だったじゃねえかよ!」
「彼氏でも命令しないでよ。」
「あんな露出の激しいドレスを彼女が着て接客してるのかと思うと気が気じゃない。」