スノー アンド アプリコット
何を、今更。
あたしは呆気にとられた。
「今までそんなこと言ったことなかったじゃない。」
「俺は! 今まで、我慢してたんだよ! お前が好きでもない男を次々作ったり、店に出て胸出しながら接客すんのも、本当はすげえ嫌なの!」
命令されるのは嫌いだけど、必死にそんなことを言われて、なんだかくすぐったい。
「…ガキねえ。自分だってホストやってたんじゃないの。"シエル"のナンバー1張ってたって?」
「……それは、だからっ…」
「あたしを探すために? 抱いたのだって清華だけじゃないんでしょ?」
「………」
ユキが憤然と黙り込んだ。
「……もうしない。」
「当たり前よ、何言ってんの?」
アパートに着いたから、あたしは鍵を取り出した。
ユキは突っ立っているから、このままあたしの部屋に入る気なんだろう。
「俺はもうお前の彼氏だから、もうしない。」
「ハイハイ、わかったわよ。」
電気をつけて、あたしは荷物を床に放った。
「……ほんとにわかってんのか? お前、もう俺のもんだからな。」
「ハイハイ…きゃ!」
あっという間にベッドに押し倒された。
文句を言う間もなく、キスが降ってくる。
それはいつものようにすぐに濃厚になって、あたしの身体の芯は熱くとろけていく。
「ん…」
「…お前、覚悟しろよ。」
ユキが、あの悪魔みたいな瞳で言った。
「俺はもう何も我慢しないからな。俺の独占欲舐めんじゃねえぞ。」
「………っ」
息を呑むような色気が、あたしにまで絡んでくるようだった。
絡んで、囚われる。
背すじに甘い戦慄が走った。