スノー アンド アプリコット
ユキの唇があたしの首すじを辿って胸元に辿り着く頃には、すっかり服がはだけさせられていた。
あたしはもうすぐにでも受け入れられるのに、
ユキだってもう耐えられないほどの欲望を漆黒の眼に帯びているのに。
いつも尋常じゃない執念深さであたしの身体をわけがわからなくなるくらい溶かしてからじゃないと、ユキはあたしを抱かない。
「もう、誰にも触らせるな。」
指先があたしのそこかしこの輪郭をなぞり、熱い舌が肌を舐め尽くそうとする。
もうどこを触られても、あたしの身体は跳ね上がるほど、敏感にさせられているのに、まだ。
「ユキ...」
あたしの耳に唇を寄せて、ユキは吐息混じりの声で念を押す。
「誰にもだぞ。俺以外、誰にも。店にも行くな。」
こんな時ばかり、あたしが承諾するまで、命令する。
下僕だったくせに。
「アン、ずっと俺のものだぞ、わかってるな?」
もう、そんなこといいから、早く。
「返事。」
あたしは言葉なんか発せる状態じゃないのに、ユキはめげずに促す。
「お前の全部、ずっとだぞ。」
「も、しつこっ…」
「当たり前だろ。こうでもしないとお前どこに消えるかわかんねえ。」
あたしの抗議の声をキスで封じてから、長い睫毛を上げて、潤んだあたしの両眼を見つめてくる。ユキの唇が言葉を漏らしているのか、あたしの鼓膜が勝手に震えているのか、なんだかさっぱりわからない。
アン、俺を好き?
俺を好き?
ずっと俺のもの?
もう逃げない?
どこにも行かない?
俺を好きだろ?
ずっと俺だけ?
なあ、ずっとーー...
「どうなんだよ。」
目尻から涙が零れ落ちた。
それを信じられないくらい、優しく唇で拭うくせに。
「杏奈。」