興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
トクトク鼓動が聞こえて来る。…速い。

「あれは…今ここに居るきっかけを作ってしまったようなものだ。…声が聞きたくなったんだ。…様子が知りたかった」

もっとギュッと抱きしめられた。

「声を聞いたら、…そしたら会いたくなった。ただ会いたくなった。
顔だけ見られたらいいと思った。
いざこうして会って、顔を見たら、…抱きしめたくなった。
藍原、上手く言えない。だけど。…好きだ。…凄く好きだ。…愛おしくて堪らない。
こんな急激に、…異常かな…俺。こんな思い、合ってるか?
…おかしくなりそうだ」

…解ってる。
まだ良く解らないのに、こんなに一方的な事をしては、藍原を困惑させてしまうだけだろう。
だけど気持ちも衝動も止められない。…どうしても沸き上がってくるんだ。それは確かだ。だが…俺は卑怯だと思う。藍原の俺への気持ちを知って……好きだと思ってくれている相手だ。だから…手に入れられないことはないだろうと…。どこかでそう確信している。

「ごめんな藍原…。もう、いい加減離さなきゃと思ってはいるんだが、離したくないんだ」

課長…。

「あの、私も…もう少しいいですか?」

「藍原?…」

確かめたい、どこか何か解らないけど、確かめたい。そう思った。

「このまま、もう少し…お願いします」

「うん…」

…はあぁ。何か大きなモノに包まれているような…。ゆったりと、でもしっかりと守られているようなそんな感じがする。余裕がある…。これが課長の気持ちそのままのような…。

「藍原…」

「は、い…」

…心地好い。課長の中に吸い込まれそうになっていた。

「もういいかな?これ以上は駄目だ…。帰れなくなりそうだ、ハハ」

身体を離された。

「…はい」


「…じゃあ。ごめんな、折角入れて貰ったのに。珈琲、駄目にしてしまうな」

玄関で靴を履く課長を見送る。

「大丈夫です。私が飲みます。課長に頂いたスイーツを食べるには、二杯でも足りないくらいです」

「藍原…」

キャ。玄関先でまた抱き寄せられた。

「帰り際に…狡いぞ、そんな事を言って。…藍原の方がいつだって狡い。はぁ。…おやすみ」

頭をポンポンとされた。

「そんなこと…あ、…おやすみなさい。あ、有り難うございました」
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