興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
課長、帰ったようだな。

ピンポン。
カチャ。

「はい?あ、坂本さん…」

「藍原、ちょっといいか?」

「はい、どうぞ」

「あ、これも、忘れ物だぞ」

…カーディガン。押しつけるように渡された、私の身包み一式は、下着以外、結局全て忘れていたという事ね…。
坂本さんの服をずっと着ていたから、脱いだ服の自覚が薄れていたんだ、きっと。
…脱いだり着たり、出掛けたり、脱いでまた着たりと、色々とバタバタとしていたし。
何より、他人の部屋に居るという意識が薄かったのかも知れない。

「あ、有り難うございます。さっきも有り難うございました。でも…」

「あー、そうだよ。来るなら来るって言っといてくれても、…焦ったじゃないか。だけど何か悪かったな。来てるなんて知らなかったから持って来て。大丈夫だったか?ブツは」

…ブツって。何よ、そんな言い方…。

「大丈夫でした!課長は…見たりしないので…。
あ、珈琲入れます。丁度、頂き物のスイーツを食べようと思ってましたし」

「俺は…別に、いい。藍原が見舞いに貰ったもんだし。…大事に食べろよ」

「沢山あるので協力してください。駄目になっては勿体ないので」

「…ああ、まあ…いいけど。あのさ、藍原」

「はい」

「今夜、泊めて貰っていいかな」

「え…」

「マットがさ、…やっぱ寝るには、気になるんだ」

「あー、やっぱり駄目でしたか…。本当ごめんなさい。あの、もしかしたら買い替えた方がいいですか?」

「いや、しっかり干せば大丈夫だよ。そこまでの心配はいらない。俺だって日頃寝汗とかかいたりしてるんだし」

…。

「では、…今夜、一緒にベッドに。うちに泊まりますか?」

「…いいのか?」

「…はい」

…嘘だ。ベッドは寝られない程じゃない。それにマットが駄目だとしてもソファーにだって寝られる。…だけど、藍原もソファーがあるじゃないかとは突っ込んで来なかった。
俺は、“確かめたいから"、今夜泊まる事にした。
あんなにソフレなんてもう駄目だとか言っといてだ。
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