興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「お…、何だかドキドキするな。女性の部屋ってだけで」

「…何言ってるんですか。もうとっくに部屋には入ってるじゃないですか…」

「そうだけど、ベッドルームは何かまた特別じゃないか」

色が白いのもあるからだろう。アルコールのせいで少し色着いている喉元のネクタイを緩めるところが目に入った。

「…そうでしょうが。それは今は考えないでください」

「うん、じゃあ失礼しま〜す」

何の意識もないのに、変にドキドキしますから。言動には注意して欲しいんです。

「あ、上着と…ズボン、脱いだら貸してください、掛けますから」

「あ、うん、有り難う。あのさぁ、紬?」

「はい…?」

ベッドに腰掛け、靴下を脱いでいる。

「俺のパンツ姿って平気?」

もう…だから。平気も何ももう脱ぎ始めてるじゃないですか。

「…それは、そういう事は、触れずにサラっと流してください。そこは…気にしないようにしようとしてるんです。サッと脱いでサッとベッドに入ってください!」

「おー恐…で、パンツを脱ぐのか?」

「あ、ちが…、パンツ、で!です」

「おぉ、じゃあ、脱ぎま〜す。ハハハ」

だから…サラっとって言ってるのに…。

背中でカチャカチャ、ベルトを外す音がする。
…はぁ、私、何してるんだろう。
部屋に連れて来られたから、当たり前みたいに居るけど、よく考えたら脱いでベッドに入って貰って、声を掛けて貰えば良かった事じゃない?ていうか、勝手に寝てもらって良かったのよ。その後でスーツを拾って掛けたらいい事なのに。もう…。自分でも気がついてなくて、本当はテンパっていたんだ…。
…手なんか引いて連れて来るからいけないのよ。何もしないって言ったって…。

「紬、いいぞ〜。ベッドに入った」

「…はい」

探るように振り向いた。

「ハハ、大丈夫だって」

…良かった、本当にベッドに入っていた。そうは言ってもだ。坂本さんのことだから、また何かしてるんじゃないのかと思った。
抜け殻になったズボンを拾い上げ、ワイシャツ、上着と一緒にハンガーに掛け、取り付けてある壁のフックに掛けた。…ふぅ。

「紬」

「はい?」

今度はなんだろうか。振り向いた。
坂本さんが掛け布団をめくってポンポンとマットを叩いている。
はい?

「紬、おいで。早く、ここ」

あ、…。精神的に目眩がする。倒れる訳にはいかない。絶対、気を失っちゃいけない。
『坂本、テメー、何様だと思ってるんだ、ぁ゙あ゙?』…なんてね。
嫁入り前の娘が使う言葉ではないですからね。……あー、…こんな事。親が知ったら泣いちゃうな。待っててね尚紀、て言うとでも思ってるのかしら?
何気に布団を戻しながら話し掛けた。

「朝、何時起きですか?大家さんが来るんですよね?」

「あ、うん大丈夫。来たら紬の部屋のインターホン、鳴らして貰うように言ってあるから」

………はぁ?…とんだ出来レースじゃないの…。
…坂本ぉ〜。…最初から完全にうちに居るつもりで来てるじゃないの。断られるとかは、想定してないの?
パンツ姿で、追い出してしまおうかな…。
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