興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
結局、まだ時間もあるって事で、藍原が自分も飲むからと珈琲を入れてくれた。

私はカフェラテにしますが、どうしますかと聞かれた。
俺はブラックでいいと返事した。
ソファーに移動して珈琲を飲んだ。

藍原はダイニングテーブルの食器を片付けていた。

俺も手伝うよと言ったが、それではお泊りのお礼にならないし、少しですからと、丁重に断られてしまった。

空いたカップを持って洗い物をしている藍原のところに行った。
丁度洗い終わったところだった。

振り向いて両手を出して受け取ろうとする藍原に渡した。
俺は藍原に、それが当たり前かのように軽く触れるだけのキスをした。何も考えなかった。何故だか、したくなったからだ。
自然の流れだ。…俺的には。

藍原は驚いていた。勿論、悲鳴は上げなかったけど解った。何となく動きが止まったからだ。
手はカップを持って塞がっていたから、藍原の両肩に手を掛け顔を寄せたんだ。

「あ、…したくなったからした」

謝るつもりは無かった。だから素直に、言い訳にもならない事を言ってみた。

「…前科二犯になりましたよ」

藍原はボソッと言うと、顔を少し伏せた。
ん?

「……何してるんですか。何だか恥ずかしいから…今の顔見られたく無いです…」

んー、何だ、…どうした藍原。…可愛いな。
気が付けばもう抱きしめていた。

「…これはソフレの続きですか?」

何とでも言ってくれ。藍原。俺は今、猛烈に抱きしめたくなったんだ。
多分、極度な睡眠不足が、妙なアドレナリンを爆発させたのだと思う。…言い訳だけど。

「抱きしめたいから抱きしめさせてくれ」

「…もう。8時25分になったら駄目ですよ…時間厳守です…」

なんで5分前?

「ネクタイを結ばないといけないから」

あ〜。…はぁ。そうか。なるほど…、そうか。うん。じゃあ、ぎりぎりまで抱きしめるぞ。
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