夢を忘れた眠り姫
「緑豊かで田舎の風情を残しつつ、交通の便が良くて、親子二人で住むには手頃なマンションがちょうど新築で売り出されていたからそこに決めたらしいんだけど、まぁ、同じ都内に居を構えていると本妻を刺激するから、あえて「都落ち」したんだろうな」
「そ、そうですか…」
そのマンション、つまり貴志さんにとっての実家に立ち寄るという話は出なかったけど、言わずもがなで帰るつもりはないんだろうな、と判断した。
「君は?ずっと東京暮らし?」
「あ、いえ。出身は群馬県の前橋です」
元々は父親の故郷。
……父が育った、養護施設のある街。
実は父は両親の顔を知らない。
その母、私にとっての祖母にあたる人はまだ十代で父を身籠ってしまい、しかも相手の男性に逃げられて、とても育てていける環境ではないという事で、知り合いを介し、なかなか子どもができなかった夫婦に里子に出したらしい。
しかし運命の悪戯か、父が4歳の時、その夫婦に奇跡的に子どもが授かり、父の立場はとても微妙なものになった。
夫婦は最初は父のこともそれまでと変わらず、実の子と分け隔てなく育てようと考えていたようだけれど、実際にその子が生まれ、日々世話をしているうちに、案の定愛情に差が出てきてしまったようで。
『やはり実の子の養育に専念したい。このままではこの子をぞんざいに扱ってしまうかもしれない。最悪な仕打ちをしてしまうようになるかもしれない』
「そ、そうですか…」
そのマンション、つまり貴志さんにとっての実家に立ち寄るという話は出なかったけど、言わずもがなで帰るつもりはないんだろうな、と判断した。
「君は?ずっと東京暮らし?」
「あ、いえ。出身は群馬県の前橋です」
元々は父親の故郷。
……父が育った、養護施設のある街。
実は父は両親の顔を知らない。
その母、私にとっての祖母にあたる人はまだ十代で父を身籠ってしまい、しかも相手の男性に逃げられて、とても育てていける環境ではないという事で、知り合いを介し、なかなか子どもができなかった夫婦に里子に出したらしい。
しかし運命の悪戯か、父が4歳の時、その夫婦に奇跡的に子どもが授かり、父の立場はとても微妙なものになった。
夫婦は最初は父のこともそれまでと変わらず、実の子と分け隔てなく育てようと考えていたようだけれど、実際にその子が生まれ、日々世話をしているうちに、案の定愛情に差が出てきてしまったようで。
『やはり実の子の養育に専念したい。このままではこの子をぞんざいに扱ってしまうかもしれない。最悪な仕打ちをしてしまうようになるかもしれない』