夢を忘れた眠り姫
「卵がもっとやわらかい方が良い場合は秒数を減らして、反対にもっとしっかりさせたい場合は増やして、自分のお好みの固さを探ってみて下さい」

「分かった。いや~、これは良いことを教えてもらった。色んな料理に使えるもんな」

「前にテレビで見たんですよ。いちいちお湯で玉子を茹でるのは面倒だし時間調整も難しいですもんね。ぜひとも活用して下さい。じゃあ、これは貴志さんの分なので」


『何だか料理番組の先生とアシスタントさんみたいな会話だな』と思いつつ、それを締めくくるべく、私はそう言いながらお皿を右手で示した。

いつまでも話していたらせっかく温めた料理が冷めてしまう。


「さっきのソースをスプーンで適量かけて、先に召し上がっていて下さい。私も準備ができ次第食べますんで」

「分かった。丁寧に教えてくれてありがとう」

「いえいえ」


動き出した貴志さんを横目に、私は自分の分の温泉卵の制作に取りかかる。


「すっごい旨いよ、これ」


ダイニングテーブルに料理を配膳し、椅子に腰かけた所で、ソファーの方で食していた貴志さんに声をかけられる。


「ホントですか?」

「うん。普通のレストランのランチだったら千円は取られるよな」

「あ。でも、お店のは汁物が付いてたりしますよね。そういえば作るの忘れちゃってました」


いつもだったらコンソメスープとか添えたりするんだけど。
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