夢を忘れた眠り姫
「あなた、朝も私の後を付いて来ていましたよね?いえ。覚えている限りでは、ここ数日の間ずっと」


必然的に彼も歩みを止め、微妙な距離を保ったままボソボソと言葉を返した。


「いや……。だって、俺もこの界隈に住んでますから。電車通勤だし、このルート上で頻繁にかち合ったからって別に不思議な事では…」「だったら何故、お見かけする度に雰囲気が変わっているんですか?」


私は質問を重ねた。


「たとえば今日の場合だったら、朝はスーツにコートで会社員風だったのに、今はブルゾンとジーパンに変わっている。荷物だってスーツケースからリュックになってるじゃないですか」


違和感の正体はこれだったのだ。


「朝と夜で、そこまで服装や持ち物が変わるなんて、一体どんなお仕事をなさってるんですか?」

「そんなことあんたに答える義務はないでしょう」

「その都度印象を変えて、私に姿形を記憶されないようにしているとしか思えないんですけど」


男性は頑張って応戦しているけれど、私だって負けてはいない。

だって、もう充分に確信を得て会話しているのだから。

間違いなくこの男性は最近私の周りに出没し始めた。

それがいつからなのかは正確には分からないけれど。

少なくとも今週に入ってからはずっと、会社の行き帰りに張り付かれていたと思う。
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