夢を忘れた眠り姫
毎日その姿を視界の端に納めてはいたけれど、指摘した通り、度々外見を変えられていたのでなかなか同一人物であるとは認識できなかった。

だけど脳や心の深層の部分ではちゃんと気が付いていて、そして今日の朝、『連日怪しい奴が周りをうろついているぞ。気をつけろ』と警告を発したのだと思う。

だからあれほどの焦燥感にかられたのだ。


「……チッ、やっぱ誤魔化しきれねーか」


男性は突然、開き直ったような口調で言葉を発した。


「朝の段階でこうなる予感はしてたんだよな。あーあ、キャラクターは統一しておけば良かった」

「……あなた、誰なんですか?」

「せっかく同棲してるのに、何で彼と別行動を取ってるんだ?」


私の尋問には答えずに、男性は反対に問い掛けて来た。


「付き合ってる事はすでに職場の同僚に把握されてるんだから、同棲だって別にバレても構わないだろうに。まぁ、帰りはタイミングが合わないこともあるだろうけど、朝は仲良く肩を並べて出勤できるだろ」

「え……」

「せっかくの連休中も、全然デートらしき事をしていなかったし。唯一一緒に出掛けた先は近所のスーパー。しかも、店内や道中で交わされていた会話はとても恋人同士とは思えないものだった。付き合い始めでまだ遠慮してるって感じじゃなくて、まるで運動部の先輩後輩みたいな色気のない空気感でさ」

「スーパー…」
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