夢を忘れた眠り姫
その発言で、すでに昨年末には尾行を開始されていた事が分かった。

すると彼はズイッと足を踏み出し、私との距離を縮めてから続けた。


「あんたら、ホントは付き合ってなんかいないんだろ?」

「あなた、いったい…」

「こういう事情を掴んでいて、後をつけ回している人物となると、だいたい予想はつくんじゃないの?」


その言葉に、一瞬間を置いてから私は答えた。


「……貴志さんのお母さんが、雇った探偵?」

「ご名答」


男性はニッと笑った。

何ともイヤらしい笑い方だった。


「……なんで、私に正体をバラしてしまうんですか?今後調査ができなくなってしまうじゃないですか」

「ここまで来ちまったからにはもう良いよ。それに、どっちみち近いうちにあんたとコンタクトを取るつもりだったからさ」


男性は笑いの残骸を残しつつ続けた。


「もう少し様子を見るつもりではいたんだけど、まぁ、仕方ないやな。こうなる運命だったんだ」

「コンタクト…?」

「あの母親、貴志理恵子さんは超ケチでさ。必要最低限の費用しか出すつもりはないのに『女の過去、身辺を徹底的にあらって欲しい』とか言っちまって。イマイチやる気が出ない案件だったんだよな。適当に調べて『この費用でできるのはここまでです』って言って終わりにしようと思ってたんだけど、しょっぱなからとんでもないドデカイネタを掴んじまったから」
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