再現教室~死のリプレイ~
信一がゆっくりと振り返り、千鶴を見た。


千鶴は目に涙をためたまま何も言わない。


自分の代わりに死んで欲しい。


そんな事、言えるわけがない。


でも、浮かんだ涙で千鶴はすべてを語っていた。


「俺……死にたくないよ」


信一が震えた声で訴える。


さっきまでの怒りは消え去り、その表情は恐怖で歪んでいる。


しかし、犯人は待ってはくれなかった。


《次は、一週間前の登校時間を再現してください。相談時間は30分です》


男か女かもわからない声がそう言い、プツッと途絶えた。


「一週間前なんて……覚えてないよ!」


千鶴が叫ぶ。


確かにそうだ。


昨日の昼休みから随分と時間が逆戻りしている。


「落ち着け」


そう言ったのは続だった。


「《リプレイ》をやらせる理由はわからないけど、指定される時間や日にちにはなんらかの共通点があるんじゃないかと思うんだ」
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