春うらら
「とりあえず、終わったやつから帰っていいぞ。短い連を休楽しめ」

橋元さんの言葉に、仕事がなんとか終了した数名が帰っていく。

短い……短いよねぇ。

世の中一週間近くの連休があるのに、うちはたった三日の連休だもん。

でも連休あると、私はお給料が減るなぁ。

考えながら、コピーした書類を橋元さんのところに持っていった。

「新見も上がっていいぞ」

珍しい、名前で呼ばれた。

「もうお仕事ありません?」

「だいたい終わった。後は……どうにかなれってヤツだ」

神頼みっすか?

思わず笑ってしまうと、速見さんが近づいて来る。

「あげる」

振り返って、いきなり渡される一枚のスケッチブック。

それに視線を落とし、無言になる。

「おー?」

不思議そうな橋元さんの声は、ちゃっかり耳を素通りしていった。

そこに描かれていたのは、明らかに私の横顔だ。

めちゃくちゃ似てた。

目線は少し上……を見ながら、楽しそうに微笑んで、風に飛ばされそうになっている髪を押さえている。

そして、スケッチブックに散らすように描かれたピンクの花びら。

桜の嵐の中で、とても生き生きと、そして綺麗に描かれた私。

呆然とスケッチを眺めた。


えーと……なんて言えばいい?


「ね? 綺麗でしょう?」

そんな事を言われて、身体中が火照ってきてしまう。
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