春うらら
「おかしなことを言いましたか?」

「ああ。いや……女性はいつも、年齢の話になると敏感だから……」

まぁ、現実社会では大して気にもとめてませんが。

だって、隠してなんになるの?
まぁ、気になる人は気になるし、私もネットの世界では気にしているけどね。

「大っぴらにしているわけじゃありませんけど、別に隠すような事でもないです。誕生日聞かれたら、私は喜んで教えますよ?」

「じゃあ、教えて」

……微笑みながら何故かじっと見下ろされて、私も微笑みを返す。

どうしよう。

そんな風に言われたら、逆にめっちゃくちゃ言いにくいっす!

ここは『うん』とか、『ふーん』とかで返してもらわないと困る場面だからね!

なんでそんなところから“会話とかしてみようかな”的な返事になったかな!

「喜んで教えてくれるんじゃないの?」

とっても不思議そうに言われても、こっちが不思議だっていうの。

「えーと。六月六日です」

「ゾロ目だ」

「速見さんはいつなんですか?」

ちらりと横目で速見さんを見ると、彼は桜を見上げながら首を傾げた。

「たぶん、今日」

たぶん今日?

たぶん……って、今日!?

「ハッピーバースデーじゃないですかっ! お祝いしないと。今日の帰りに皆でお祝い……」

そう叫ぶと、静かな視線がゆっくりと下りてくる。

「できる?」

……難しいかも?

皆、徹夜明けだろうし、明日は休みだけど、ヘトヘトだろうし。

「とりあえず座ろうか」

彼がそう言ったのは満開の桜の下で、速見さんは着ていたパーカーを脱ぐと、いきなり私の腰に巻き付けてからお腹の前で袖を結ぼうとする。

「な、なんですか! いきなり!」

「スカート。座ると汚れる」

え? 一応、紳士的にベンチに座る事を想定しての行動なの?

でも、これってかなり問題だ!
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