春うらら
「君はいつも“一生懸命”だね」

「は、速見さんは、いつも“マイウェイ”を突っ走ってますね」

お互いにニコニコしながら、同時に首を傾げた。

「マイウェイは初めて言われた」

「私も一生懸命は初めて言われました。うるさいとか、騒がしいはよく言われますけど」

「誉め言葉は、そんなしょっちゅう聞いてたらありがたみがないよ」

……今のって、誉め言葉だったんだ。

「あ、ありがとうごさいます」

「でも新見さん、気を使ってくれるのはありがたいけど、話しかけなくても俺は平気だよ」

「私が平気じゃないんです。知らないわけじゃない人と、こんな近くにいながら、お互いに黙り込むとかおかしいじゃないですか!」

「いや、そんなに仲良くもないのにペラペラしゃべれたらすごいよ」

その仲良くもない人間を、いきなり拉致したのはどこのどいつだ!

怒って口を開きかけたら、ひらりと目の前を花弁が通り過ぎ、くるくると廻りながら落ちていく。

それをつい視線で追ってしまう。

さわっと緩やかな風が吹いて振り返ると、薄桃の白井花びらがハラハラと舞い落ちてきて目を見開いた。

「きれーい!」

つい歓声をあげたら、花吹雪の向こうには微笑みを浮かべている速見さんの視線。

「うん」

……どうしてあなたは私を見ながら同意をするのでしょうね?

いいや、ここで顔を赤くしたりしたら、ちょっと勘違い女になっちゃうだろうし……。

とりあえず、半笑いしながら速見さんを眺める。

「は、花吹雪が綺麗ですね」

「ううん」

めちゃくちゃあっさり否定された!
< 7 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop