春うらら
「速見さんも、けっこう面白いんじゃないですか?」

私なんかより面白いと思うよ。

「そうでもないよ。変わってるってよく言われるけど、俺は普通」

「普通の定義を、一度よーく考えた方がいいと思います」

呆れながらそう言って、もらったミルクティーのプルタブを開けた。

それにしてものどかだなぁ。

確かに寒いっちゃ寒いけど。朝のどこかひんやりとした空気が、徐々に暖かさに変わってくる。

スーツ姿の人の通りは減って、替わりにベビーカーを押すお母さんの団体様や、明らかに旅行に来たような、何語をしゃべっているのかわからない人たちが増えていく。

海外の観光客も増えたよね。

そんなどうでもいい事を考えていたら「よいしょ」とか言いながら、速見さんはベンチに横になり、なんと私の膝に頭を乗せた。

それを見下ろして、目をまんまるにする。

ど、どうしよう。何、いきなり寝てるの?

「は、速見さん!?」

「……少ししたら起こして」

ちょっと待て! 人の膝を枕にされても困るし、あなたのパーカーは私のお尻の下だし!

「こんなところで寝たら、風邪をひきますって!」

「大丈夫。そんなに長いことじゃないから」

何が大丈夫か言ってみろ!

説明を求めたら、一言で終わりそうな予感がするけど。

でも……たぶん、速見さんも徹夜組なんだよね。起こしてしまうのは可哀想だと思う。

思うけど……。

通りかがる人にはジロジロ見られるし、中には口笛を吹いてくる人もいる。

めちゃめちゃ恥ずかしいんですけど!

なんの罰ゲームですかコレ!
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