ヘタレな野獣
「あれから三年かぁ・・・
長かったような、短かったような・・・」

レモンサワーをグビッと一口呑んで岸田は言った。

「もう、良いんじゃないの?」
「・・・」
「忘れろなんて野暮な事は言わないし、言えない、でもさ・・・」

分かってる、岸田が言いたい事。

だけど、そんな風に言われても、私はどう答えていいのか分からない。


三年前、私は大切な人を亡くした。

自殺、だった。

何故自殺しなければならなかったのか、未だに分からない。


彼が居なくなってから、私は恋をするのが怖くなっていったんだ・・・


ごめん、この話はしない約束だった、と、岸田は笑いながら私に謝った。

サバサバしてる岸田だからこそ、今の関係が続いているのかも知れない。


「ねぇ、冬子さぁ?アンタ、もしかしてあのヨレヨレ君に、惚れちゃってたり、する?」

ドッキ~ン

「なっ、何言い出すのよ!
んな訳あるはずないでしょ!?」
「あっ、噛んだ・・・」

岸田はそう言ってニヤニヤにやけてる・・・
岸田は、なんでもお見通し。


多分今の私の心の中だって・・・

「あの人に悪いとか、後ろめたさを感じてんなら、それは間違ってるよ」

ほぉおら・・・


「ほっとけないっていうか・・・
だから、この感情は恋とかそんなんじゃないと思うんだ」

ふぅ~ん・・・
岸田は横目で私を見ながらデカい口を開けて、串カツを頬張った。

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