ヘタレな野獣
先方の会社に到着し、私は車を降りて正門横にある警備員室に行き、警備員に山下部長とのアポを伝えた。


すると、こんな答えが帰ってきた。


「あぁあ、田崎さんですか、ちょっと待って下さいよっ、と。
あぁあ、これだ、はい、伝言です、これをあなたにと」


警備員に差し出された社封筒を、私は何が何だか理解しないまま受け取るしかなかった。


「あの、それで山下部長様は・・・」
「えっ?あぁあ、10分程前に会社を出られてます」

えっ?
帰ったって事?


腑に落ちないまま、警備員にお礼を言って、ヨレヨレ君達が待つ車に戻る。



「・・・あれ?補佐、山下部長さんは?」

車外で私を待っていてくれた武田君。


「それが、もう帰ったって・・・」
「はぁあ!?だって、約束今日っしょ?時間だってまだ約束の15分も前っすよ!?」

腕時計で時刻を確認しながら、武田君はそう言った。


「どうかしましたか?」

なかなか入ってこない私達に痺れを切らしたのか、窓から顔を覗かせるヨレヨレ君。

「とにかく車に乗りましょうか・・・」

私と武田君は一旦車に乗り込んだ。

【週明けに最終プレゼンを行う
時刻は午前10時
場所は先日と同じ会議室
次回は是非雨宮課長同行で

本日は急用が入り、キャンセルでお願いする
またの機会に
山下】



「・・・・・」

< 47 / 148 >

この作品をシェア

pagetop