あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
マンションの駐車場に車を止めて、二人で部屋を目指した。
半歩の距離をあけて、主任の後ろをついていく。
隣り合って歩くのは恋人同士の仕草のようだし、離れて歩くのはどこか他人行儀だし。
葛藤した末の行動だった。
思えば、こうして二人でエントランスをくぐるのは、初めての夜以来だ。
ピカピカに磨かれたエントランスの床を見つめる。初めての夜もこんな風に床は蛍光灯の光を浴びて、輝いていたのだろうか。
あの日のことをあまりよく、覚えていない。あのときのエントランスがどうだったのか。あのとき、私はどんな顔をしていたのか。
ただひとつ分かるのは、きっと、あの日がなければ、こんなにも主任とは深い仲にならなかった。