あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


……不意に、私の足が止まった。

気配を感じて、主任が怪訝そうに振り返る。

「中田?」

私が立ち止まったのは、エントランスに置かれた観葉植物の隣で、誰かを待つように立つ人を見つけたから。

そこに立っていたのは、もう会うことはないと思っていたひと。

「久しぶりだね。綾音」

彼は曖昧に微笑みかけてくる。
知っている。優しい彼はいつも、こんなか弱い笑顔を浮かべていた。

「知り合いか?中田」

「……ええ」

そこにいたのは、かつての恋人。
私と主任が関係を持つようになった原因の元婚約者、勇輝だった。

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