あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


「……はい」

さすがに休憩所のすぐ近くにいたのがバレているのに、聞かなかったとは言い張れない。

素直に認めた私を主任は特に責めなかった。

「驚いた?」

「いえ、昨日、平野さん本人からそのような打診があると聞かされていましたから」

素直にそう言った私を、主任は驚いた目で私を見た。

「平野さんが?」

「はい」

「君にか?」

「主任が電話で席を外している間に」

「そうか」

そう言って、主任はまた、遠くを見つめる。
無表情の顔に、何も感情は見当たらない。
眉からも瞳からも主任の考えは全く推測不能だ。

「……平野さんって、主任のことを好きですよね」

何となく呟いた言葉。
その言葉に、主任がこちらを見る。

「お前もやっぱりそう思うか?」

「私にヘッドハンティングの話をしてきた時、まるで牽制されているみたいでした」

まるで。
大好きな煮干しを守る猫みたいに。

……うん。例え、悪いな。

主任が煮干しで、平野さんが猫。
……不意に思いついた例えだが、上司に対して少し申し訳ない。

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