あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。
「牽制、か」
主任が呟く。
そう。牽制された。
……私たちは、平野さんを焦らせるくらい、特別な関係に見れたのだろうか?
「……私たちには、何も……ないのに」
苦笑がこぼれる。
……牽制だなんて。
しなくても、主任には私なんてきっと視界に入ってないのに。
強い視線を感じて横を見ると、主任が不機嫌そうに眉を潜めていた。
「主任……?」
「……俺たちには、何もない、か」
彼は自身の髪をそっと掻き上げる。
「そうだよな。何もない」
まるで自嘲のように、鼻で笑って。
主任は立ち上がった。
「コーヒー貰ってもいいか?」
「あ、淹れましょうか?」
私も慌てて立ち上がる。
そんな私を彼は片手で制した。
「いや、お前は休んどけ。自分で淹れるよ。キッチン借りるな?」
「あ、どうぞ。すみません」
「いや、謝る必要はないって。お前はいる?」
振り返った彼に、私は手のひらを胸に当ててから、首を横に振った。
「いえ、せっかくですが、やはり体調が悪いので……」
「そっか。流石にコーヒーは胸焼けするよな」
主任はそう言って、キッチンへと姿を消した。