あなたの「おやすみ」で眠りにつきたい。


ヤカンから湯気が立ち、お湯が沸けると、主任はそっとカップに注いだ。
いつも飲むインスタントコーヒー。

豆から挽いたわけじゃない。
けれど、主任はいつも美味しいと飲んでくれる。

主任はスプーンでクルクルかき混ぜる。

このときに私を包んでくれるような温かみのあるコーヒーの香りが好きだ。
いつもこれを深呼吸して、心を落ち着かせるのだが……。

主任の淹れたコーヒーの香りがここまで届いたとき。
私は思わず手のひらで口を覆った。

胃の中から酸っぱいものがこみ上げる。
息を荒くして、何度も唾を呑み込み、その波が引き下がるのを待った。

だけど、どうしても……耐えられなくて。
キッチンを横切り、トイレへと駆け込んだ。

「……ハァ……ハァ……っ」

何度も口の中から吐き出すのに、出てくるのは、水分だけ。
苦しい。……苦しい!

「中田!大丈夫か!?」

異変に気づいた主任が、トイレの前に来た気配がした。

「……っ……だいじょ……っ!」

大丈夫という言葉も、咳によって、阻まれる。

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