運命の恋は健康診断から始まる
「歩ちゃん、どうしたの?」
そう言われてハッと振り返ると宗一郎さんが私の真後ろに立っていて、私の背中が宗一郎さんの胸に触れていて、手が肩に触れている。
「あ、ごめんなさい」
慌てて離れると、宗一郎さんは残念、と呟いて私の顔を覗きこむ。
「ごめん、歩ちゃん。ちょっと戻らなきゃいけなくなっちゃった」
申し訳なさそうな顔をする宗一郎さんに私は微笑む。
「あ、大丈夫ですよ。私も戻りますから。お仕事中にありがとうございます」
忙しいのにわざわざ申し訳なかったなと思いつつ、笑顔を向ける私に宗一郎さんも微笑む。
「いや、顔見れて嬉しかった。午後も頑張れそうだわ。
こちらこそ仕事中にごめんね。じゃ、またね」
そう言って軽く手をあげて歩いていく宗一郎さんを見送って私も健診会場に戻ろうと階段を上がる。
さっき私を見ていた男の人が立っていた場所を見ると、その人はもういなくなっていた。
階段を上がって、ドアを開けた私は、そのドアを閉めたくなってしまった。