偽りの姫は安らかな眠りを所望する
慌ただしさが一段落し食器を片づけていたティアの元へ、コニーが山盛りの洗濯籠を抱えてやって来た。

「今朝遅れてきた罰よ。これ、ひとりでやってちょうだい。お昼までには終わらせてね」

ズシリと重い籠を渡され、洗濯物の影から覗かせたティアの顔は暗く沈む。

「本当にすみませんでした。じゃあ、早速……」

とぼとぼと洗濯場に行こうとしたティアの背にプッと笑い声がかかる。

「冗談に決まっているでしょう。無理に今日中に終わらせなくてもいいの。でも、悪いけど本当にひとりでやってもらっていい? ごめんね。どうしても急ぎで仕上げなくちゃいけないものがあって、しばらく手が離せそうもないのよ」

コニーは申し訳なさそうに手を合わせて頼む。

「それは、もちろん」

今朝の件もだが、ここ数日のうちに何回も皆には迷惑をかけている自覚がある。これくらいで挽回できるのなら、お安いご用だ。

「その代わりと言ってはなんだけど、夜になったら少し時間を作れるから、私の部屋に来てね~」

ひらひらと手をひらめかせてコニーは去っていく。

彼女の言い分に気になる点はいくつもあったが、今はこの山を少しでも減らすことが先決である。かなりの重量がある籠を軽々と持っていたコニーに感嘆しつつ、ティアはよたよたと洗濯場までそれを運んでいった。

これだけの量をひとりでこなすとなると骨が折れる。いっこうに減らない洗濯物の山に、腕と腰が悲鳴を上げかけたティアは、一旦休憩を入れることにした。

手頃な石の上に腰掛け、凝り固まった肩を揉む。そよ吹く風に鼻を向ければ、いつものように薔薇の香りが混じってはいるが、やや弱くなってきている気もする。
季節遅れで咲いたあの花たちも、そろそろ終わりを迎えるのかもしれないと、そっとため息を吐く。

「喉が渇いたなあ」

独りごちて立ち上がろうとしたティアの頬に、ひやりとしたものが触れた。

< 136 / 198 >

この作品をシェア

pagetop