偽りの姫は安らかな眠りを所望する
くっきりと余白に浮きあがったのは、ティアがフィリスに宛てた手紙だった。
もともと炙り出して読めるように書かれていたのか、ある程度の期間をおくと自然に現れるよう施したものなのかはわからないが、彼女が簡単に発見されないように細工したものには違いない。
フィリスが出立してすぐにこれを読んだら、きっと引き返してしまうと思ったからだろう。現に今、フィリスはそこの扉を開け、飛び出して行きたい衝動に駆られている。それを押し止めているのは、僅かにある王族としての責任感。
突然フィリスがこの場から消えた際、責めを負うのは誰かと考えを巡らせれば、己の軽率な行動は文字通り命取りになりかねない。
慎重に、確実に。寝不足などと言ってはいられない。
フィリスは必死に頭を働かせた。
「コニー! コニーはいるか?」
やや乱暴に開けた扉を抜け控えの間を覗くと、鼻歌交じりに針仕事をしていたコニーが、顔を上げる。
「もうお支度を始めますか? 王子様になるのなら、それほどのお時間は頂きませんけれど」
つまらなそうに口を尖らせたコニーは、フィリスの眉間に寄るシワの深さに気がついた。
「その反対だ。おまえの力を貸して欲しい」
少々、いや、かなり無理のあるフィリスからの頼みを聞き、コニーは俄然瞳を輝かせる。持ち込んだ衣装箱の中からゴソゴソと布の塊を取りだして、得意満面で広げてみせた。
「ほら、やっぱり用意しておいてよかったじゃないですか。お任せください! 一世一代の最高傑作に仕上げてみせますから」
彼女の小さな手が、これほど頼もしく思ったことはなかった。
もともと炙り出して読めるように書かれていたのか、ある程度の期間をおくと自然に現れるよう施したものなのかはわからないが、彼女が簡単に発見されないように細工したものには違いない。
フィリスが出立してすぐにこれを読んだら、きっと引き返してしまうと思ったからだろう。現に今、フィリスはそこの扉を開け、飛び出して行きたい衝動に駆られている。それを押し止めているのは、僅かにある王族としての責任感。
突然フィリスがこの場から消えた際、責めを負うのは誰かと考えを巡らせれば、己の軽率な行動は文字通り命取りになりかねない。
慎重に、確実に。寝不足などと言ってはいられない。
フィリスは必死に頭を働かせた。
「コニー! コニーはいるか?」
やや乱暴に開けた扉を抜け控えの間を覗くと、鼻歌交じりに針仕事をしていたコニーが、顔を上げる。
「もうお支度を始めますか? 王子様になるのなら、それほどのお時間は頂きませんけれど」
つまらなそうに口を尖らせたコニーは、フィリスの眉間に寄るシワの深さに気がついた。
「その反対だ。おまえの力を貸して欲しい」
少々、いや、かなり無理のあるフィリスからの頼みを聞き、コニーは俄然瞳を輝かせる。持ち込んだ衣装箱の中からゴソゴソと布の塊を取りだして、得意満面で広げてみせた。
「ほら、やっぱり用意しておいてよかったじゃないですか。お任せください! 一世一代の最高傑作に仕上げてみせますから」
彼女の小さな手が、これほど頼もしく思ったことはなかった。