偽りの姫は安らかな眠りを所望する
 *

天井まで届く大きな窓には、強さがぶり返した風雨が打ち付けられガラスを揺らす。ときおり光る稲妻が、ラルドの整った顔に濃い陰影を作りだしていた。

絵の中のルエラは変わらぬ微笑みを湛えたまま年を取らない。彼が幼い頃に別れたままの、若く美しい姿だ。

装いをあらためたティアを見たときは、この中から姉が抜け出てきたのかと錯覚するほど。
だが姉とティアは別の人間だ。そんなわかりきった現実を、まったく異なる髪と瞳の色が知らしめる。

「だけど、姉上。さっきの彼女の眼は、あなたがここを出ていくときに見せたものにそっくりでしたよ」

恐らく本人さえまだ気づいていない、まだ芽吹き始めたばかりの小さな感情。

「本当なら、これは喜ぶべきことなんでしょうね」

苦笑で歪めた顔には、おもしろくもないのに笑えと言われて困惑しながら表情を作った、肖像画の幼い彼の面影がしっかりと残っていた。

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