俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
ついこの間、大学に入ったと思ったら来年にはもう就職活動がスタートする。
否応なしに選択を迫られる。

一流大学と言われるだけはあって、周りの学生は将来をしっかりと見据えている奴が多い。
一番気が合ってつるんでいる伊坂だって、チャラチャラ遊んでいるように見えても起業に興味があるとかでしっかり勉強もしていた。


まだ高校生で、頭も良くない、要領も悪い、あの羽衣子ですらイラストを描くことだけは得意で将来はwebデザインなんかの仕事をしたいと言っていた。

洸には何もなかった。

何でも器用にこなすことは出来るけど、やりたいことを問われると答えられない。

自分はうまく就活を乗り切って一流企業に入社することも、難しい資格を取って士業と呼ばれる仕事に就くことも出来るだろう。

そこまでは自信がある。
だけど、その先は?


今までの人生と同じように、与えられた課題をゲーム感覚でミスなくこなしていけばいいのだろうか。

いくら何でもそれではダメなことくらい洸にもわかっていた。

少なくとも、父親はそんな仕事の仕方はしていなかった。

洸がこんな店と言った、あの小さなお店を守ることだって簡単なことではない。

何となく、他にやりたいことがないから。そんな理由で、店を継ぐわけにはいかない。



「ーーちゃん。 こ〜〜う〜〜ちゃん!」

ふと気がつくと、紺色の地味なブレーザーを校則通りにきっちりと着こなした羽衣子が洸の顔を覗き込んでいた。

前を歩く洸の姿に気がついて走ってきたらしく、息を切らせていた。

「洸ちゃんがぼーっとしてるなんて、珍しいね。

何をそんなに落ち込んでるの?」

不思議そうに羽衣子にそう尋ねられて、洸は初めて自分が落ち込んでいることに気がついた。
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