俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
◇◇◇

羽衣子は試着室の鏡の前で呆然と立ち尽くしていた。

なんで、こんな事になっているのか。
状況がちっとも飲み込めない。

羽衣子はローズピンクのワンピースに身を包んでいた。
自分では絶対に選ばない鮮やかな色に、肩が大きく開いた大人っぽいデザイン。

露出度は結構高め。
にも関わらず、下品な印象にならないのは美しい光沢のある上質な生地のおかげだろうか。


羽衣子は裾からちらりと出ているプライスカードにおそるおそる目を向ける。

「ひっ・・・」

思わず叫び出しそうになるのを、何とか堪えた。 普段、羽衣子が買うワンピースとは桁が違う。


「お客様、いかがですか?」

「えっと、その・・・」

丁寧に声をかけてくれる店員に羽衣子はもごもごと言葉を濁らせる。
出来ることなら、カーテンを開けずにそっと脱いでしまいたい。

「ワンピース1枚着るのに、どんだけ時間かかんだよ。もういいだろ?」

そんな台詞とともに、洸がカーテンを全開にした。
羽衣子がまだ着替えていたら、どうするつもりなのだろうか。


「まぁ!よくお似合いです。 こういった鮮やかなピンク色はお客様のように色白な方でないと中々着こなせないんですよ〜」

さすがは接客のプロである高級ブランド店の店員だ。嫌味にならない絶妙なお世辞がスラスラと口から出てくる。

羽衣子は特別肌が綺麗な訳ではないけど、確かに色は白い方だ。

だけど、どう贔屓目に見ても、この色っぽいデザインのドレスは似合ってないだろう。


「ほら、洸ちゃん。 よぉ〜く、見て。
ちっとも似合ってないことがわかるでしょ? もう脱いでいい?」

羽衣子がぶすっとした顔を向けると、洸はクスクス笑いながら羽衣子の側までやってくる。

「いや、思ったより似合ってる。羽衣子は地味だから、これくらい派手な色の方がいいな。
ま、絶望的に胸が足んないけど」

「・・・胸だけじゃなくて、身長も足の長さも色々足りてないと思う」

羽衣子のぼやきを無視して、洸は店員に向き直った。

「これ、下さい。そのまま着ていけるようにして頂けると助かります。
それと、この服に合わせた靴とバッグも選んでいただけますか?」

外面モードの洸の紳士的な微笑みに、店にいた女性店員達が競うようにして沢山の靴とバッグを洸に差し出した。
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