イジワル御曹司と花嫁契約
 母はとても真剣な目で私を見つめているので、私は視線を逸らした。


なんで、今、彰貴の話題?


「婚約、嘘なんでしょ」


 心臓の音が自分の耳にも届きそうなほど、激しく動き出す。


「な、何言ってるの。お母さんだって、彰貴に会ったでしょう。嘘なわけ、ないじゃん」


 目が泳ぐ。必死で動揺を隠して、作り笑顔を浮かべる。


「胡桃の嘘に乗っかっておこうと思ってたんだけど、もしかしたら今日で最後になるかもしれないから、ちゃんと話しておこうと思って」


「最後って……何?」


 母の口から聞き捨てならない言葉が出てきて、体中の血が一気に冷える。


 母は、なんでもないことのように話を続ける。


まるで、明日は雨が降るって天気予報で言っていたから傘を持っていけ、みたいに。


「彰貴さんのおかげで、とてもいい先生にオペをしてもらえることになったから、そんなに心配はしてないんだけど、でも最後になる可能性はゼロじゃないからね。

お母さん、最初から気付いてたよ。二人が嘘をついていること」


 あまりにも淡々と言うから、否定する言葉も出なかった。


何も言えずにいる私に、母は更に話を続ける。
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