イジワル御曹司と花嫁契約
「きっと何かわけがあるんだろうなと思った。

急に婚約の話が出て、こんないい個室と有名なお医者さんを担当にしてもらえて、手術してもらえるなんて、おかしいと思わないわけないでしょ。

でも、胡桃が彰貴さんのことを好きだっていうことは真実だって分かったから、騙されたふりをしてきたのよ」


 もう、嘘は通用しないと思った。


そもそも母に嘘をつくということ自体が無謀だったんだ。


私のことを一番に分かっている母に、こんな大それた嘘が通用するわけない。


 下を向いて、ぎゅっと手の平を握りしめた。


そして、ポツリポツリと時系列に沿って真実を語り始めた。


彰貴との出会いから、お互いの利益のために契約したこと。


そして最後に彰貴のことを好きになり始めていることも。


でも、一晩共に過ごして襲われそうになったことは言わなかった。


彰貴の名誉のためにそこはさすがに隠した。


 私が話している間、母は一度も驚いたそぶりを見せることなく、まるで全て知っていたかのような顔で静かに聞いていた。


「……やっぱりね、そんなところかなと思った。だって話ができすぎてるもの」


「そうだよね。私が彰貴みたいな人と婚約なんかできるわけないもんね」
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