イジワル御曹司と花嫁契約
 でも、そんなことを言ったらまたたしなめられそうで、言葉をぐっと飲み込んだ。


 これが遺言になりませんように。


また明日も母に会えますように。


 そして、手術の日を迎えた。


 母の手術は最短でも五時間は超える大手術だ。


彰貴も、今日が母の手術の日ということは覚えていたみたいで、朝から電話をくれた。


今日はとても大事な会議があるらしくて、病院に行けないことを申し訳なく思っているのが伝わってきて、それだけでありがたいし、励まされた。


そもそも最初から彰貴に付いていてほしいなんて思うこと自体が図々しくて、そんなこと考えたこともなかった。


 確かに側にいてくれたら、どんなに心強いかと思うけど、これは私と母の問題で彰貴には関係ない。


私一人で乗り越えなきゃいけない。


 母がオペ室に連れられて、扉が閉まり手術中のランプがついた後も、私はオペ室から離れることができなかった。


手術中の赤いランプを見ながら、廊下脇に置いてある長テーブルに一人座って、ただただ祈る。


それくらいしか私にできることはない。


 そうして四時間が経過した頃、突然オペ室が騒がしくなった。


看護婦さんが走って出てきたり、私には何に使うか分からないような手術道具がオペ室の中に急いで運ばれていった。
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