イジワル御曹司と花嫁契約
何が起きたのか分からないけれど、嫌な予感がして、体中がぞわぞわした。


座っていることもできなくて、立ったまま手術中のランプを見つめる。


指先が震えていた。


怖くて、不安で、今にも泣きだしそうだった。


 もしも……。もしもこのまま母が死んでしまったら。


昨日の言葉が、本当に遺言になってしまったら。


私は今後どうやって生きていったらいいんだろう。


母を失って、一人で立っていられる自信がない。


いかないで。私を置いて、いかないで。


お父さんお願い、お母さんを連れていかないで。


 気が付いたら、彰貴に電話を掛けていた。


三コール目で留守番電話になった時、黙って通話を切った。


 出るはずなんかないのに。


今日は大事な会議だって言ってた。


何やってるんだろ、私……。


 涙が零れて頬を伝った。


しっかりしろ、しっかりしろ、自分。


そう言い聞かせるも、涙が溢れて止まらなかった。


 その時、握りしめていた携帯の着信が鳴った。


驚いて見ると、発信者は彰貴だった。
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