イジワル御曹司と花嫁契約
「……もしもし?」


 泣き声のまま電話に出た。


『胡桃? どうした、大丈夫か?』


 焦っているような、心配している優しい声に、大きな波が押し寄せるように涙がさっきよりもどっと溢れだした。


 声にならない声を上げ、嗚咽を零す私に、彰貴は黙ってそのまま私の泣き声を聞いていた。


『今から、そっちに行く』


「え?」


 予想もしていなかった言葉に驚いてしまった。


『待ってろ』


 そう一言残して通話は途切れた。


 ……え、来るの?


まさか、だって、今日は大事な会議があるって言ってた。


 半信半疑のまま、ずっと泣き続けていると、本当に三十分もしないうちに彰貴が病院に駆けつけてきた。


「胡桃!」


「彰貴!?」


 長椅子から立ち上がり、目を丸くして彰貴を見る。


電話を切った後も泣き続けていた私の目は、きっと赤く腫れていたのだろう。


私の顔を見るなり、彰貴は心配でたまらないといった表情を浮かべ、ぎゅっと私を抱きしめた。


「あき……たか?」
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