イジワル御曹司と花嫁契約
 だからといって、この場で承諾はしたくなかった。


それしか方法がなかったとしても、抗いたかった。


それが、唯一私にできた抵抗だった。


「別れるかどうか、その決断は別にして、一つだけお願いがあります」


 彰貴のお父さんの右眉が一瞬動き、少しだけ身を乗り出して私を見つめる。


「君のお願いとは何だろう」


 口元には笑みも浮かんでいる。


私が願うものは何なのか、とても興味があるらしい。


願うもので、その人自身を推し量ろうとしているようにも見える。


「もしも私が彰貴と別れることを選んだとしても、店のマージン料をなくしたりとか、私に得になるようなことは一切しないでください。

もう二度と関わることはないように、私のことは忘れていただきたいです」


 私の瞳の奥を探るように、彰貴のお父さんはじっと見ていた。


そして、ふっと笑みを零して、目線を逸らし背もたれに寄っ掛かった。
< 189 / 280 >

この作品をシェア

pagetop