イジワル御曹司と花嫁契約
自分から告げたくせして、お願いだから別れてくださいって言ったくせして、本当に別れることになったら、焦ってしまうなんて。


顔を上げ、黒いドアを見つめる。


そこには彰貴の顔は見えない。


首を振り、嫌だと言外に伝えても、彼には届かない。


「じゃあな。……それと、最後に一言だけ。……愛してる」


 私が言いたかった言葉を、彰貴が口にして、抑えていた涙はダムが崩壊するように一気に溢れてきた。


 息ができない。


どうして最後までそんなに優しいの?


 最低だなって軽蔑した声で罵ってくれればいいのに。


私が傷付けたみたいに、思いっきり酷い言葉を投げつけて、消えない傷を残してくれればいいのに。


私はそれくらい酷いことを言ったし、最低な別れ方をしたと思う。


 ねえ、彰貴、こんな私を最後まで愛してくれたの?
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