イジワル御曹司と花嫁契約
 母は、小さな子供をあやすような優しい声と共に、私の背中をポンポンと撫で続ける。


 声を上げて泣いた。


小さな子供のように、恥も外聞も忘れて泣き続けた。


母の前で私はまだまだ子供で、母はやっぱり母だった。


 たっぷり三十分は泣き続けて、それからようやく話せるくらいまで落ち着いたので彰貴と別れたことを説明したけれど、何度も泣きながら話したので、話が終わった頃には外が暗くなっていた。


「……そうか。胡桃が、別れなきゃいけないと思った気持ちは分かる。

胡桃がどうすることもできないのと同じように、申し訳ないけど、お母さんにも何とかする力はない。

でも、彰貴さんはどうなのかな?

例え彰貴さんにもどうすることもできなかったとしても、知らないで別れることは、本当に彼のためになるのかな?」


「でももしも、彰貴が知って、お父さんと戦うことになったら、それこそ取り返しがつかなくなる。

あの二人は、ただの親子喧嘩じゃ収まらない。

あまりにも力を持ちすぎているから、二人が対峙した時の社会的影響が怖い」
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