イジワル御曹司と花嫁契約
「胡桃様は、自分を責める必要はありません。

突然別れを告げることになったのは、きっとお父さまが原因なのですよね?

それなら、仕方ありません。

彰貴様のお母さまのように、決して歯向かってはいけませんよ。

戦いの土俵にすら上がれずに、全てを失うことになるでしょう」


「でも、でも、それじゃあ、彰貴はどうなるんですか?

彰貴はお父さんの言いなりになって大切なものを奪われ続けて、東郷財閥を継ぐ駒として一生働かなきゃいけないんですか?

彰貴の意思は? 幸せは?」


 気が付いたら、頬に涙が伝っていた。


彰貴がかわいそうで仕方なかった。


子供好きに見えたのに否定したのも、一生結婚するつもりはないって言ったのも、今なら気持ちが分かる気がした。


 小さい頃、お母さんに捨てられたと思っていたら、結婚をして子供を持つことが怖くなるだろう。


トラウマになるほど傷付いたことを、私は再び彰貴に対して行ってしまった。
< 225 / 280 >

この作品をシェア

pagetop