イジワル御曹司と花嫁契約
少し照れくさそうに、微笑みを浮かべながら彼は言った。


「え……?」


 まさか、そんなことを言われるなんて思ってもみなかった私は、当然のことながら戸惑った。


もしかして……私だって気付いてない?


 自分でも別人のように変わったと思ったし、八重木さんも何も知らなかったら私だと分からなかったと言っていた。


 彰貴は、私と気付かず誘っているの?


 トクントクンと胸が騒ぎ出す。


もしも分かっていないのなら、そっちの方が好都合じゃないか。


一晩だけ、ほんの少しの時間でいい、彰貴の側にいたい。


 差し伸べられた手に、震える手を重ねる。


まるで騙しているみたいで、禁忌に震えた。


けれどそれ以上に、ぎゅっと握りしめられ、引き寄せられた胸板に、震えるような歓喜が襲ってくる。
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