イジワル御曹司と花嫁契約
 時が、止まってしまえばいいのに。


このままずっと踊り続けていられたら。


切なさで胸がぎゅっと締め付けられる。


ずっと、会いたかった……。


 彼の胸に顔を埋める。


私だって気付いてなくてもいい。


だからお願い、このまま……。


「綺麗だ……」


 彰貴の囁くような声が、私の耳元に吹きかけられる。


「この会場にいる誰よりも。こんな綺麗な人は見たことがない」


 こんなキザな台詞を吐くなんて。


私だって知ったらどんなに驚くだろうか。


「豚に真珠かと思ったら、見事なダイヤモンドに変身したもんだ」


 ……ん? 豚に真珠?


「女って怖いなー」


 さっき、私の耳元で甘い言葉を囁いていたとは思えないほど、憎たらしい口調で投げかけてくる。


 胸に埋めていた顔を上げ、眉根に皺を寄せて彰貴を見上げる。
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