イジワル御曹司と花嫁契約
腰の曲がったお婆さんが何度も丁寧にお辞儀をしながら歩いていく姿を手を振りながら見送る。


 お婆さんの姿が見えなくなったところで、腕時計に目をやった。


 まずい、待ち合わせ時間四十分も遅刻してる。


 六本木ヒルズの森タワーのふもとに巨大なクモのオブジェがある。


そこが彰貴との待ち合わせ場所なのだが、広いし人が多いし、どこにいるのか分からない。


 キョロキョロと首を左右に振りながら探していると、クモのお腹のちょうど真下に腕を組んで不機嫌そうに立っている長身の男がこちらを睨んでいた。


 うわー、怒ってるー。


 踵を返して帰りたいところだけれど、あちらに私の存在はすでに見つかっている。


これは覚悟を決めて叱られに行くしかあるまい。


「ご、ごめん、遅れて」


 引き攣った笑顔を浮かべながら、努めて明るい声を出して彰貴の元へ近寄る。


「なんださっきの婆さんは」


「婆さん?」


 いきなり言われて、首を傾げる。


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