イジワル御曹司と花嫁契約
「俺たちは婚約してるんだぞ」


「ふりね!」


 被せるように大きな声で言ってやった。


「婚約してるのに夜を共に過ごさず帰ったら怪しまれるだろうが」


 ……まあ、確かに。


 彰貴のいい分も一理あると思って、私は頭を整理させるために一旦口を噤んだ。


 ……ということは、ただホテルに来ただけってこと?


私が危惧しているようなことは起こらないってことでいいのかな。


 いやでも、いくら彰貴が私を女として見てなくても、ホテルで一夜を共に過ごすのは抵抗がある。


何もしないって言われても、やっぱりそういうのは良くないと思う。


「分かった。じゃあ私はバレないようにこっそり一人で帰るね」


「バレるに決まってるだろ」


 またしても顔に『お前は馬鹿か』と書いてある。


「でもこういうのっていくらふりだとしてもいけないと思う」


「こういうのっていうのは?」


「一緒に泊まるのはさすがに抵抗ある。いくら彰貴が手を出さないって約束してくれても、やっぱりさ……」


「ちょっと待て。いつ俺が手を出さないと約束した」


「え?」


 きょとんとした目で彰貴を見ると、奴は平然と言い放った。


「手を出すぞ、俺は」


「は?」
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