イジワル御曹司と花嫁契約
必死に言う私に、彰貴は不服といった表情で見下ろす。


「どうしてやめなきゃいけない。さっきまで感じてただろ?」


 確かに感じていた。


でも、この一線を越えちゃいけない。


 こんな風に流されて体を許してしまったら、絶対母が悲しむ。


初めては好きな人と、愛し合ってしてほしいと思っているはずだ。


今まで大切に育ててくれたのに、ここで彰貴としてしまったら、母を裏切るような気がした。


「初めては好きな人とするって決めてるの!」


 まるで宣言するように睨み付けながら言った。


すると彰貴はなぜかとても傷ついた顔を浮かべた。


瞳はゆらゆらと揺れ、唇をぎゅっと噛みしめていた。


「……好きにしろよ」


 吐き捨てるようにそう言うと、彰貴は私の上から退いた。


背中を向けて、苛立ちを抑えるように自分の前髪をくしゃくしゃと掻いている。


 ……やめて、くれたの?


 上半身だけ起き上がり、乱れた服を整える。


彰貴は私に背を向けたまま立ち上がり、そのまま黙ってベッドルームを出て行った。


 声を掛けようと思ったけれどやめておいた。


気が変わってまた押し倒されたらどうしようと思ったからだ。


 彰貴のいなくなったベッドで、膝を抱えてうずくまる。
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