壊れるほど抱きしめて
「あの日、あんたに言いたい事も言えないまま居なくなってるし、かと思えば避けられてるし、アパートにも一週間くらい居なかっただろ?」
「それは……坂木くんにもう深入りはしないって言ったから」
私は俯いたまま言った。
やっぱり顔は見れない……。
「あの日、俺をかおりの両親に合わせてくれてありがとう……」
「え……」
私は顔を上げて坂木くんを見つめた。
「かおりのお父さんと話をして、手紙も読んだ。ずっとかおりの事を想うと苦しくて、だけどかおりの方がもっと苦しかったのに、何も気づいてあげられなかった自分が悔しかった。それでもかおりはっ、俺と居て幸せだったってっ……」
坂木くんはそこまで言うと涙ぐみ、言葉が詰まっていた。
そんな坂木くんを私は抱きしめた。
「我慢しなくて泣いていいんだよ?ずっと苦しかったね……」
そう言って私は坂木くんの背中を擦った。
坂木くんも十分、苦しんだ。
かおりさんが手紙に書いてたように、また笑って、誰かと幸せになれるように。
「俺さ、今度かおりの墓参りに行こうと思ってる。だから……あんたに着いて来て欲しい」
「私に?でも私はもう坂木くんの側に居ない方が……」
そこまで言って言葉に詰まる。
「俺の心の中にズバズバ入ってきて、勝手に居なくなるなよっ!」
「坂木、くん?」
「あんたがアパートに居なかった一週間、関係ない筈なのにあんたの事ばかり考えてた。そしてさっき自分の気持ちに気づいた。あんたが……小春の事が、好きだ」
「えっ」
今私を好きって言った?
それに名前で呼んでくれたよね?
「だから勝手に居なくなるなよ……」
「私でいいの?」
「これでも信じられない?」
そう言って私の体を抱き寄せキスをした。